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カエルマーチで行こう! 【6】

こてこてに日焼け止めを塗った肌さえも、じりじりと焦がすような日差し。
帽子を深くかぶり、サングラスで防御。駅前で不動産屋が配っていたうちわをぶんぶん振っているという、色気のかけらも無い姿だけれど、それもやむ無いことだろう。
新興住宅地のはずれにある、公園の駐車場で開催されたフリーマーケット。準備にそれなりに時間をかけて、値札つけもがんばったというのに、この暑さじゃあ、当然、客もろくにこない。
サチエのやつは30分前にダウンして、カエルマーチの中でしばらく寝ていたけれど、ついさっきTシャツの襟元を汗でびっしょり濡らしつつ、出てきた。
「中、蒸し風呂。」
そりゃあそうでしょう。まだお昼をちょっと回ったくらいの時間だけれど、すでに店じまいをするブースも現れてきた。賢明かもなあ。
「ね、マーチのボンネットで、目玉焼き作れると思う?」
「あ、やめて。間違いなくできると思うけど、目玉焼きって想像がもうすでに暑い。」
まだ、6月である。今年の夏はどうなっちゃうんでしょう。

今までフリーマーケットは、客としてしか参加したことが無かったのだけれど、今回出店することにしたのは、わけがある。
今のアパートを引き払って、引越しをすることにしたのだ。
といっても、仕事は変わらないし、行政区域で言えば隣の市。引越し業者を頼むのもばかばかしいほどに近いので、会社の同僚のつてでなんとかならないかと模索している最中だ。
大きな家具は洗濯機と冷蔵庫くらいだし、こまごましたものは、箱詰めして何度も往復すればいいや、でも、せっかくのチャンスだから片付けよう、という安易な発想の流れでの出店である。だから、売ることにそんなに積極的でもないのだ。売れたらうれしいけれど、お店やさんごっこも楽しいだろうし、もしかしたらカッコいいお客さんとの出会いもあるかも、きゃ(はぁと)
ってな、妄想の後半はことごとく粉砕されたけれど、まあ、初回はこんなものでしょう。
撤収撤収。ちょっと白目気味になってるサチエの目の前でパンと手をたたき、それ、冷やし中華でも食べに行こう、と言った。

今度のアパートは、前よりも広くなる。キッチンも機能的で、築年数も若い。ほんの気まぐれにめくってみた住宅情報誌で、目が合ってしまったのだ。
なんだかんだ言いながらも、次々と動いてるよね、サギリって。とは、サチエの弁だ。そうなのかな。自分ではのんびりし過ぎているような気になっているのだけれど。

ホームセンターで買ってきたダンボール箱に荷物を詰め込んでいるときに、自分が思っていた以上に洋服を持っていることに気づいた。そんなに流行を気にするほうではないのだけれど、やっぱり「これは恥ずかしいなあ……」というものもあるわけで。こういうのは思い切って処分してしまおう。
それと、もうひとつ、発見。サイズ、そんなに変わってない。へへへ。
サチエに言わせれば、サギリはちびだけど、バランスは悪くないし、丸っこいけど、太ってもない。目立たないけれど、確実にそれに惹かれるオトコがいるタイプ。なのだそうだ。それって、マニアックって意味か? と前歯で下唇を噛みながら抗議してみたが、そういう意味じゃなくてよー、とさらりかわされた。
そういえばサチエは進展の無い恋愛をまだ続けている。どんなやつなのか、写真を見せろと言ったら、そんな証拠は残せないのよ、だそうだ。「しいて言うなら、唐沢寿明と江口洋介を足して2で割らない感じ」
余計見たくなるようなことを言う。

引越しの運搬でちょっと困りそうなのが、いつの間にか集まっていたミニカーだ。可愛い車のおもちゃを見かけると、ついつい買い求めてしまい、結構な数になってしまった。マーチなど大小あわせて10台以上あるかもしれない。飾ると埃がつくし、掃除の邪魔になりそうなので、クロゼットの一番下の引き出しに溜め込んでいたのだ。
タオルとかに包んで運ぶのがいいのかな? とサチエに相談したら、サチエは目を丸くした。「サギリ……、今までそんなミニカー集めてるなんて言わなかったじゃない。」 いや、別に集めているってほどじゃないし、などと、怒られそうになって、しどろもどろに言い訳する子供のように、あわあわしていたら、サチエは強く言った。
「そんなチャンスを眠らせておくなんて、もったいない。ミニカー好きな男は多いのよ。そしてそういうコミュニティには女が絶対的に少ないから、モテるでしょうに。あああ、もったいない。」
まるで私の背後にもったいないお化けがいるかのように、熱く語ったのにはびっくりしたけれど、そんなものなのかね、と私はのんびり思う。
確かに、付き合うんだったら、共通の趣味があったら楽しいだろうな、と思う。ミニカーか。気づかなかった。そうかー、よいかもしれないなあ。
悪い癖でつい妄想モードに入ってしまった私に「ま、そうやって、貪欲じゃないところが、サギリらしいんだけどね。」と言いながらサチエは、にっこりと笑った。

今年最初の冷やし中華を食べ終えて、店の外に出ると、やっぱりまだ日差しはぎらぎらしていた。カエルマーチも暑がっているように見えたので、サチエに洗車したいけど、いい? と尋ねた。もちろんいいよ、と返事をもらい、私たちは、コイン洗車場へ向かう。
セルフのガソリンスタンドにあるような全自動洗車もいいけれど、たまには手で洗ってあげよう。

これまで、お疲れ様でした。まだまだこれからもお世話になります。

「ま、そのうち、助手席はサチエじゃなくて、いい男になりますけれど、そんときもよろしくね。」と言いながら、じゃぶじゃぶと水をかける。笑いの含んだふざけんな、というサチエの声を聞きながら、ああ、私やっぱり、こういう日常が好きだ。結構しあわせかもしれないなあと思っていた。

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Comments

と、いうわけで、最終回でした。

夕べのうちにUPしようとしたら、サーバにつながらなくて断念。朝から更新しております。

さあて、次は何を書くかなあー。
妄想としてはですね、もう、niftyから怒られるくらいのエロエロか、純愛過ぎて書きながら赤面するようなボーイズラブか、超観念的な文学か、ですね。
たぶん、どれでもない(そりゃあそうだ)

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