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カエルマーチで行こう! 【3】

別に目的地を設けなくても、ドライブって楽しい、と思えるようになったのは、このカエルくんのおかげかもしれない。気の置けない友人。まさにサチエのようなヤツを助手席に乗っけて、日帰りドライブ。しょーもない漫才のような会話をしながら、うつりゆく風景を眺めるのは、悪い気分ではない。

少しずつ車の中身が充実してきた。CDはケースに入れて数枚常備されているし、後部座席には、ビーズクッション。車内が汚れたときのために、使い捨てのクロスやら、ウェットティッシュやら。こうやって車は私色に染まっていくんだね。

そして、本日登場の、新グッズは、サチエを迎えに行ったとき、一つは自分で装備し、一つはこっそり助手席においておいた。
サチエは、「お待たせ~」と明るい声で言いながら助手席のドアを開けた直後、それと私の顔を見て、5秒ほど沈黙した。
そのままゆっくりと助手席に座りつつ、それを自分も装備した。私はそれを見て、大爆笑した。「あはははははははははは」
「サギリっ! 指差して笑うなよ。なんだよ、これはっ! てか、あんたもかぶってて恥ずかしくないのっ!?」
それは、私が夜なべして、ニットで作った、カエル帽子だった。我ながら自信作で、ちょっと間抜けな顔つきにするのに苦労した。
「似合う~、サチエ似合う~」笑いすぎてお腹が痛い。サチエだって別に本気で怒っているわけではなく、こういうの、好きなはずだ。そりゃあ、ま、そうじゃなければ、かぶって見せてくれたりしないだろう。
「……にじゅうはっさい。女ざかりが。これで。いいのかな……。」
「うっさい。愉しめっ。人生、喜んだもの勝ちなのさー。」と、私は言いながらご機嫌でサイドブレーキを下ろした。

小学校や、幼稚園の頃の苦い記憶が、少しも古びない。いつまでたっても「あれはほら、子供のときの話だからさー」なんて大人ぶって話すことができない。
28歳になった今でも、先生に怒られた記憶や、近所に住んでいた男の子と喧嘩した記憶が、真空パックのように保存されていて、ときどき別の要因でそれが解凍されてしまう。文字通り頭を抱えて、ぎゃうー、私が悪かったよう、ごめんなさいごめんなさい、と口にだして、転げまわりたくなる。
そういうとき、車の中だと便利だ。本当に口に出して、「ぎゃわー」とか言えるのだから。マイカエルマーチくんからすれば、自分の中で自分の主人が、赤面しつつ突然叫びだすのだから、たまったものではないだろうけれど。
「そういうことって、ない?」
と、助手席のサチエに話を振る。0.5秒くらいで「ないよ」と冷たい答えが返ってきた。
「あ、そ。」私はあからさまに落胆する。別にみんなと一緒、がいいと思っているわけではないけれど、共感を呼ぶ話題だと思っていたのだけれどな。
「サギリ、ちょっと記憶力よすぎなんじゃないの? 普通はさ、たとえ覚えていても、あったあった、そんなことあったよな~って、かるーく流されるものよ。」
うーん、やっぱりそういうものなのかな?
「私ね、それで一度幼馴染と再会したときに、謝ったことがあったのさ。あのときはごめんねって。んで、あの時って何? なんて聞き返されるからさ。ほら、幼稚園のとき、あなたがいない隙に、あなたのプリンを奪ったのは、私なの、って告白したんだよね。」
「奪うなよ。」
「でしょう!? 別にとりたてて欲しかったわけではなくて、なんとなくやっちゃうような危険な子供だったわけだけれど、そしたら、そんなこと覚えてるわけがないだろう、とあっさり返事されちゃったのよ。」
「そりゃあそうでしょうよ……。よかったじゃない。懺悔終了~。」サチエは、ぱっと両手を広げて、しゅーりょーと伸ばして言った。
「ところが。」
「……何よ。」
「私はですね、そういう謝って許してもらった記憶をすっぱり忘れて。今度逢ったときに、また謝ってしまいそうになるのよう~」
「処置なし。」
「ふえええぇ。」
わかってますよ。アホみたいでしょう。だけど、事実なのだ。
まあ、サチエもそう言うしかないよね。おーよしよしなんて言ってくれるような間柄ではない。というか、そんなことされたらキモチワルイ。
私は、座席のヘッドレストに引っ掛けてあったカエル帽子をかぶって、ケロケロと鳴いた。サチエは穏やかに私を見て笑う。
太陽は傾き、市街地の道路は混雑しはじめていた。だけど、私は帽子をとらないままカエルマーチのハンドルを握り続けた。

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