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カエルマーチで行こう! 【1】

「私のことを、早く嫌いになってください。」と信号待ちの隙に左手で入力をして、ざっと変換を確認して、送信。慣れた手つきではあるけれど、そんな文面を入力したのは、当然、初めてだ。
携帯は逡巡する間も見せず、「メールを送信しました」と表示した。少しは悩んだり、いこかもどろかするそぶりくらい見せろ、と思ったりもするが、だいたいそんなことは携帯じゃなくて、本来私がすべきことだ。わかってらい。
でも私は、そうしなかった。もう決めていたから。
ああ、神様、どうやったら私は、消え入ることができるでしょうか?
死にたいなんてつぶやくのはとても簡単だけれど、そこまでの覚悟は無いので、消えたいという言葉を選んでみたのです。どうかしら?

携帯電話を助手席に放り投げ、後ろの車にせかされるように、アクセルを踏み込んだ。
軽い。思いのままに車が動く。
免許を取得してから、もう10年近く経つ。てんとう虫、ビートル、と乗り潰して、さて次はどんな動物にしようと思った結果、選んだのが、このカエルマーチだった。
日産マーチ。形もカエルっぽいけれど、グリーンだったりすると(本当はフレッシュオリーブって言うらしい)、本当にアマガエルくんそっくりで、一目見て気に入った。可愛い。こいつならば愛せるに違いない。
乗ってみて驚く。軽い、綺麗、早い。いつの間にか日本車の技術はここまで進んでいたの!? と、友人のサチエに言ったら、「あんたが今まで乗っていた車が特殊なの。」とばっさり斬られた。ま、うすうすそうじゃないかとは思いましたが。

過去に何回か、泣きながら車を運転したことがある。
一度目は、目にゴミが入った。これは、ノーカウントにするか。てんとう虫(=スバル360 エンスー兄貴のお下がり。可愛い車だったけれど、私には乗りこなせなかった。)時代の話。
二度目は、聴いていたラジオドラマにマジ泣きした。車止めましたもの。おいおい泣いたぜ。これはビートル(=フォルクスワーゲン ラジオしか無かったことを物語るエピソードだね)時代。
そして、三度目は、今だ。
沈黙している携帯をちらりちらりと横目で見ながら運転していたら、じんわりと涙がにじんできた。
やべ。こらえろよ、ちくしょう。
だってさ、よくある話じゃない。ただの別れ話だよ。たとえそれが、お互い嫌いになったからではない、といったところで、「よくある」という形容詞が無くなるわけでもないだろう。
今、この瞬間にだって、人間が生まれ、死に、結婚し、離婚している。カップル誕生も、破局も、浮気も。いじめも、虐待も、初恋も。
アタリマエのイトナミの一つが、私の身に降りかかった。そして、私はそれを強行に任務遂行に導こうとしながら、どこかで悔いて泣いている。
誰からも嫌われたくなんかないやい。八方美人って言われたって、主義主張を曲げたって、嫌われるよりはマシだい。
普段割と本気でそこまで思っちゃってる私が、敢えてこんな決断をした勇気をたたえろってんだ。
誰に言ってんだ私。

涙止まったぞ。こぼれるまでいかなかったから、お化粧も直さないでいいや。
日も暮れてきた。早いウチに買い物を済ませて、家でバカ食いしてやる。
色気は、明日からだ。へっ。

そろそろこいつにも餌をあげないといけないね。これからどんどん遠出してやるからな。覚悟したまえよ、カエルくん。

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Comments

あ。あたらしい物語が、語られている。嬉しいです。
するするっと水のように優しく染み入ってきます。

つぎの展開を楽しみに、お待ちしています。

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